人文系の研究者である作者がアカデミックライティングについて書いた本である。論文に必要とされる「アーギュメント」とは何か?、「アーギュメント」の鍛え方、アカデミックな価値の出し方などなど論文執筆において重要な示唆が多く含まれている。
本書はとてもクオリティが高く、一つ一つの文章・パラフラフが洗練されている。また、本書で伝えようとしている論文執筆の方法が実際に本書の中で使われているというところもある。そのため、実際に通読するのが一番である。ここでは、すぐに意識してできそうなところをメモとして記載する。
本書では、論文に必要なアーギュメントという概念を定義しているがこれが参考になる。アーギュメントは論文が持たなければならないもので、アーギュメントの条件は、「論証を要求する主張である」とされている。この論証を要求するというのが意識すべき重要な視点である。「論証しないと納得してもらえない主張」が提示できていないといけないということのようだ。
また、他の印象深かった点が、パラグラフ解析のやり方である。論文では数十のパラグラフを組み立てるが、このパラグラフ単位での解析方法が示されている。パラグラフ解析ではパラグラフ中のセンテンス単位で抽象度を評価したり、パラグラフの文字数を測ったりすることで、プロ(これから自分が投稿したい雑誌にすでに掲載されている人)のパラグラフを定量的に理解するということをしている。この解析を通してプロの文章に比べて素人の文章の弱い点の一つが、論証部であると気づくことができる。また、パラグラフの中で特に足りない点として、アーギュメントのパラフレーズと事実の記述が不足していることが多いとある。そのため、これを意識してパラグラフを書く練習をすることで論証力を鍛えることができるようになるという感じである。
アカデミックライティングの本ではあるものの、仕事においても、レポートや報告書など知的成果物を作成するときには参考になる。私は、この本を参考にパラグラフの目標数字を設定しそこに届くようにパラフレーズやファクトを書き足すということをするようにした。なんとなく論証が不足しているような気がするという状況から定量的にどれくらい不足しているか自己確認できるようになり論証の記述がしやすくなった。おすすめの書籍だ。