タイトルの通り、問題解決の全体観について書かれている。ここで全体観とは、問題解決に必要な概念を4つに整理し(「問題解決カルテット」と書かれている)、その4つの概念を有機的に統合させることでよりよい問題解決を行おうという趣旨の話である。4つの概念とは、「問題解決ルーティン」「問題解決ツール」「問題解決モード(思考様式)」「問題解決ワーク・マネジメント(試合運び)」である。本書は上下巻と二冊構成になっており、上巻ではフレームワークなどのハードスキルを、下巻では取り組み方のようなソフトスキルを説明している。
上巻で参考になった点の一つに、ロジックツリーの作り方がある。問題解決系の本では物事を構造化して考えるといい、構造化はMECEにするといいとよく書かれているが、物事をMECEに構造化をするというのはそんなに簡単ではない気がする。そこで、本書で書かれている方法が参考になる。その方法が、(今やMECEの代表例としてよく用いられるローランドの「俺か俺以外」と通ずるものだが)「それ」と「それ以外」を考えるという方法だ。今思いついているツリーの上段を「それ」と考えて「それ」に対して「それ以外」は何かを考えることでさらに上位の構造を思いつくことができるというものだ。これは実体験としてもツリー構造が書きやすくなった気がするので便利な考え方だと思う。
下巻で参考になった点としては、仕事の熟成という考え方である。ワインなど同様に仕事にも熟成が必要で、3日ぶっ通しで考えるよりも15分×10回で分けて考えたほういい思考にたどりつくというものだ。これと併せて仕事のリズムという話もかかれており、参考になる。詳細は割愛するが、仕込み仕事→熟成仕事→仕上げ仕事という流れで行うとよいと書かれている。熟成仕事では、机上にかぎらず電車やタクシーの中で行うことで違う視点に気づけたりするのでこれが短い時間でよりよいアウトプットをつくる助けになるということだ。
本書は問題解決系のビジネス本のなかでもかなりいいと思う。この本は書店などであまり見かけないしどういう感じで出版されているのかよくわからないが、その他の問題解決本の中でもかなり読みやすく実践に使いやすい内容が多くかかれており、この本を何回も読むことが実力アップにつながるような気がする。大変おすすめの書籍である。